症例66

30代,男性。
[主訴]発熱,意識障害
10日前から主訴が徐々に出現。さらに下痢,背部痛も加わってきたため来院。

画像所見

●拡散強調像●
両側大脳半球の各所に高信号を示す中小の病変がある。

A 拡散強調像





●FLAIR像●
拡散強調像の異常信号病変が高信号を示している。

B FLAIR像





●磁化率強調像●
これらの病変やその周囲に多数の出血成分の低信号が認められる。出血性変化を伴った新鮮梗塞が考えやすいが,多発脳転移の可能性も考えられる所見である。

C 磁化率強調像





●造影T1強調像●
脳転移を示唆する増強効果は見られない。ただし,びまん性に脳溝内のleptomeningeal enhancementが目立つ。

D 造影T1強調像



診 断

感染性心内膜炎(infectious endocarditis: IE)に伴う多発脳梗塞
(本例では経胸壁心臓超音波検査で心腔内の疣贅が認められ,血液培養でmethicillin-susceptible Staphylococcus aureus [MSSA] が検出された)

解 説

感染性心内膜炎での神経系の合併症としては脳血管障害が最多で,このほか脳膿瘍,髄膜炎,脳炎などの感染性疾患がある。 脳血管障害では脳梗塞が50%以上を占めるが,脳出血やくも膜下出血の発生も知られている。 脳梗塞は大脳皮質枝領域,小脳,基底核/内包領域など様々な拡がりを示しうるが,しばしば本例のように多発する。
感染性心内膜炎による脳梗塞は基本的に塞栓性で,皮質枝領域以外では終末分枝領域に多発し,しばしば磁化率強調像やT2*強調像で出血成分の低信号を伴う。 虚血を伴わない微小な脳出血が同様の所見を示すことがあり,磁化率強調像/T2*強調像の所見が感染性心内膜炎の可能性を示唆することは知っておく必要がある。

学習のポイント

●多発新鮮脳梗塞の基礎病態●
心原性の脳塞栓症が多く,その原因としては心房細動の頻度が高い。 そのほか僧帽弁狭窄症などのリウマチ性心疾患,心筋梗塞,心室瘤,人工弁,左房粘液腫,奇異性脳塞栓症とともに本例での感染性心内膜炎がある。
非心原性の脳塞栓症としては大動脈弓や総頸動脈など頭蓋外主幹動脈のプラークからの血栓が塞栓源である頻度が高い。 このほかアンチトロンビンⅢ欠乏症,プロテインC欠乏症,プロテインS欠乏症などの先天性凝固異常症や抗リン脂質抗体症候群,播種性血管内凝固症候群,悪性腫瘍の遠隔効果(Trousseau症候群)などの後天性凝固異常などが挙げられる。

●磁化率強調像/T2*強調像での多発低信号●
(1) 出血に起因するもの
びまん性軸索損傷(DAI),アミロイドアンギオパチー(CAA),CADASIL,出血性の転移性脳腫瘍,多発性海綿状血管腫,脂肪塞栓,感染性心内膜炎,血管炎,凝固障害,白血病,血管内リンパ腫,放射線治療や化学治療(radiation-induced telangiectasiaやmineralizing microangiopathy),高山病
(2) 非出血性のもの
気脳症,多発性脳内石灰化(結核や嚢虫症),体外膜型人工肺の使用や金属性人工弁


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【出題・解説】
 土屋 一洋
(埼玉医科大学総合医療センター放射線科)
            
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